岡山で様々なテイストのおうちづくりを手掛けているZEST design/houseです。
服の収納から考える、暮らしのつくり方。
家づくりとは、単に「家を建てる」ことだけではありません。
家族が日々をどう過ごし、どんな時間を一緒に楽しみ、これからどんな未来を描いていくのか...暮らしの土台をつくる、大切なプロセスです。
その中でも、近年特に注目されているのが「服の収納」です。
収納は、暮らしの習慣や時間の流れが最も顕著に表れる場所。どこで服を脱ぎ、どこにしまい、どんな服を選び、どんな動線で日々を回しているのか。そこには、家族の価値観やライフスタイルが分かりやすく表れます。
「片付かない家にストレスを感じている」
「忙しくて、つい服をそのへんに置いてしまう」
「季節ごとの衣替えが面倒」など...
このような日常の“ちょっとした困りごと”が積み重なると、暮らしの質は大きく損なわれます。
でも、逆を言えば「収納設計」さえ見直せば、暮らしは大きく変わるということ。
今回は、「服の収納」という日常の一部を起点にして、家づくりの全体像をどう考えていくべきかを深く掘り下げていきます。実際の施工例写真をもとに、理想の暮らしをかたちにするヒントをたっぷりご紹介していきますね。
INDEX
家づくりを検討し始めたとき、誰しもまず思い浮かべるのは、外観や間取り、自然素材や設備などの「目に見える部分」ではないでしょうか。確かに、これらは家の印象や快適性に直接関係する重要な要素です。
しかし、日々の暮らしにおいて“じわじわと効いてくる”ものこそが、収納設計です。特に服の収納は、1日に何度も使用するため、家の中で最も「使い勝手の良し悪し」が現れやすいポイント。
例えば、
・朝の慌ただしい時間に服が見つからない
・畳む場所がなくてソファに服が積み重なる
・帰宅後に脱いだ服の置き場が決まっていない など...
こうしたことが、実は“日常のストレス”の正体です。逆に言えば、服の収納が適切な場所に、適切な形で設計されていれば、日々の家事や身支度がスムーズになり、自然と空間も整い、家族全員が快適に過ごすことができます。
服の収納とは、家の中の“流れ”を整える基盤であり、「暮らしのデザイン」の一部と言えるのです。
多くの人は「収納=しまう箱」として考えており、「どう暮らしたいか」という視点と切り離されてしまっているということ。
ですが、本来、収納は暮らし方を表すものであり、暮らしを育てる手段であるべきです。
1. ストレスフリーの秘訣は、動線にあり
収納に関する悩みは、量や広さの問題だけではありません。
・収納が遠い
・手間がかかる
・動線が悪い
これらが重なると、せっかくの広い収納スペースも宝の持ち腐れになってしまいます。
特に重要なのが、朝の準備の流れです。
寝室から起きる→洗面所で身支度をする→クローゼットで服を選ぶ→ビングで朝食をとる→出発する
この流れの中でクローゼットの位置が不自然だと、無駄な動きが増え、朝から「なんとなくバタバタする」日常になってしまいます。
その問題を解消するひとつが「洗面所の近くにファミリークローゼットを設ける」というアイデアです。
家族みんなの服をひとまとめにし、
入浴前後・朝の着替え・洗濯
の流れがワンストップで完結するような間取りにすることで、日々のストレスが激減します。
2. 散らかりにくい家は、収納の工夫から生まれる
よく「片付けが苦手なんです」という声がありますが、実際には収納の設計に原因があることがほとんどです。
・収納の数が少ない
・形状が合っていない
・家事動線から離れている
こうした「しまいにくさ」が積み重なることで、モノはすぐに出しっぱなしになってしまいます。
特に服は、一時的に置く場所(脱いだ服の一時置き、部屋着の保管場所など)がないと、床やソファに“仮置き”されがちです。この“仮置き”が日常化すると、散らかった部屋が当たり前になってしまい、片付けへのモチベーションがどんどん下がります。
家族みんなが自然と服を片付けられる仕組みをつくるためには、「収納場所の配置とルール化」が不可欠です。
例として、以下のようなアイデアがあります。
・帰宅動線上にジャケットなどを掛けるコートクロークの設置
・脱衣所に“下着・部屋着・タオル”が一体で入る棚を設置
こうした“しまいやすい”仕組みをつくるだけで、自然と家族全員が片付けを習慣化できるようになります。
3. メンタルヘルスにも影響する「見えないストレス」
「服が散らかっている」と聞くと、“ちょっとルーズなだけ”と思われがちですが、実は空間の乱れは心の乱れにも直結します。
特に在宅ワークや育児中など、家で過ごす時間が長い人にとっては、視界に入る情報量=精神的な負荷に直結するのです。
収納設計の見直しで「視界が整う」と、思った以上に心が軽くなるという声もあります。毎日過ごす空間だからこそ、ストレスフリーで気持ちよく保てる環境は、暮らしの質を大きく底上げします。
1. ウォークインクローゼットは万能ではない
「ウォークインクローゼットが欲しい」というご要望は多いですが、設計の工夫をしないまま導入すると、意外と使いにくいというケースが目立ちます。
代表的な失敗例として、
・中が暗くて何がどこにあるか分からない
・奥行きがありすぎて奥にしまった服を忘れる
・ハンガーパイプが高すぎて使いづらい
・結局、扉の前に物を置いて使わなくなる
ウォークインクローゼットを有効活用するためには、“使い方”から逆算して設計することが欠かせません。
理想的な設計のポイントは、
・出入りがしやすい2WAY動線
・奥行きよりも横長にして見渡しやすく
・棚板や引き出しとハンガーのバランスを取る
・服のカテゴリごとにエリア分けを行う
「何を、どれくらい、どう収納したいか」を明確にしたうえで、クローゼットを設計することで、毎日の暮らしが格段に快適になります。
2. 洗う→干す→しまうを一直線に
服の収納を語るうえで、洗濯動線の効率化は避けて通れません。
「洗って、干して、取り込んで、畳んで、しまう」
という一連の流れがスムーズであるかどうかは、暮らし全体のゆとりに直結します。
「洗濯室(ランドリールーム)」「脱衣所」「ファミリークローゼット」の位置関係に着目することが非常に大切です。
たとえば、以下のような動線が理想的です。
・脱衣所のすぐ隣にランドリールームを配置
・室内干しスペースを備えたランドリー室内に仮収納エリアを設置
・そのまま隣接するファミリークローゼットに衣類を収納
つまり、「服をしまう場所と、洗う場所が隣接している」ことで、生活は格段にラクになります。
また、近年は共働き世帯の増加や花粉・黄砂対策のため、室内干しのニーズが高まっているのも重要な背景です。
室内干し空間は、単に“干せる”だけでなく、風通し・調湿性能・においのこもらなさが鍵となります。そこで自然素材が活きてきます。
3. 玄関周りに“しまえる”仕組みをつくる
「帰ってきたとき、服やバッグをどこに置くか」は、意外と家の片付け度に大きな影響を及ぼします。とくに子育て世代では、玄関からリビングまでの動線に“脱ぎっぱなし”や“置きっぱなし”が散乱しやすくなります。
それを防ぐには、玄関収納の工夫が不可欠です。
おすすめは、「シューズクローク+外着収納」の組み合わせ。コート、帽子、ランドセル、マザーズバッグ、ベビーカーなど、外で使うものは、玄関で完結できる収納を設けるとよいでしょう。
また、通園・通学グッズを収納する「子どもロッカー」的な仕組みも非常に有効です。
こうした空間を「見せない収納」としてつくるには、扉付きの可動棚やレースカーテンで空間を間仕切り、おしゃれにまとめる工夫も可能です。
4. 子どもと暮らす家の収納設計
子育て家庭においては、服の収納は大人以上に変化しやすいニーズがあります。成長に合わせてサイズも増え、衣類の種類も増え、着替えの頻度も多いため、収納の「柔軟性」が非常に重要になります。
たとえば以下のような工夫が効果的です。
・引き出しやカゴを年齢に応じて変えられる収納
・手の届く高さに「子ども専用ゾーン」を設置
・季節の服をローテーションで入れ替えられる設計
子どもが自分で選び、自分で片付ける「習慣」がつけば、家族全体の負担も減り、子どもの自己肯定感も育ちます。
こうした収納計画こそ、家づくりの最初に考えておきたいポイントです。
1. 調湿性と通気性が服を守る
服の収納において、もうひとつ大きなポイントとなるのが「湿気」です。
湿度が高い日本では、収納内部に湿気がこもりやすく、カビや臭いの原因になることも少なくありません。
特に岡山は比較的温暖な地域ではあるものの、梅雨や台風時期など一時的に湿度が上がる季節があります。そのため、通気性や調湿機能の高い自然素材を使った収納スペースが非常に有効です。
2. 木材・漆喰の活かし方とその機能
たとえば、クローゼットの中に木の棚板を使うことで、湿度を調整してくれます。また、収納内部の壁面に漆喰や珪藻土を用いると、においや湿気を吸着してくれる効果があります。さらに、自然素材のやさしい香りや質感は、服に触れるたびに心地よさを感じさせてくれます。
“見えないところにこそ、上質な素材を使う”という考え方は、長く暮らすための家づくりには欠かせません。
3. 自然素材×収納でお掃除もラクに
自然素材を使った収納は、見た目のやさしさや心地よさだけでなく、実用面でも魅力があります。木材や珪藻土などの自然素材は静電気が起きにくいため、ほこりが付きにくく、お掃除もラクに。日々の手入れがぐっと簡単になることで、気持ちよく長く使える収納になります。
暮らしにやさしい素材選びで、快適な空間づくりを。
1. 暮らしに合わせて変化する収納の考え方
収納とは、“固定された空間”ではなく、“成長する暮らしに合わせて変化する空間”であるべきです。
新婚時代、子育て期、子どもの巣立ち、セカンドライフ…
人生のステージによって、服の種類も数も使い方も大きく変わります。だからこそ、「余白のある収納設計」が重要です。
最初から“詰め込む”のではなく、可動棚やカスタマイズ可能な構造にすることで、将来的な変化にも柔軟に対応できます。
2. 家族それぞれの“収納クセ”
たとえば、ご夫婦で収納に対する考え方が異なることもよくあります。
ご主人は「出しっぱなしOK派」
奥さまは「全部隠したい派」
お子さんは「自分で選びたい派」
それぞれの“収納クセ”を尊重しながら、ゾーン分けや扉の有無の工夫などで、バランスをとることがポイントになります。
服の収納は、単なる「スペース」ではありません。
それは、家族の生活のリズムや価値観、日々の流れを映し出す“暮らしの土台”です。
収納を見直すことで、毎日の家事がスムーズになり、家族みんなが快適に過ごせて、心にもゆとりが生まれます。
さらに、その収納が無垢材や自然素材でつくられ、岡山の気候や風土に合った工夫がされていれば、ただの収納以上に「心地よい暮らしの土台」となります。
「片付かない家」ではなく、
「自然に整う家」へ。
「ストレスを感じる家」ではなく、
「心がほどける家」へ。
あなたと、あなたのご家族の暮らしに寄り添う収納設計を、かたちにしていきましょう。